「新事業進出補助金」(第1回公募締切:7/10)

既存の事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援する補助金です。

公募期間・目的

公募期間:令和7年4月22日(火)~令和7年7月10日(木)18:00まで

申請受付開始:2025年6月頃(予定)
公募締切:2025年7月10日(木)18:00

中小企業新事業進出補助金とは、既存事業と異なる事業への挑戦を後押しするための制度です。新市場・⾼付加価値事業への進出を後押して中⼩企業の⽣産性・収益の向上を図りつつ、従業員の賃上げにつなげていくことを⽬的としています。

補助対象者

補助対象者は「企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等」です。企業だけでなく、個人事業主も補助対象となります。

企業だけでなく、個人事業主も補助対象となりますが、「賃上げ要件」にて、従業員がいない場合は補助対象外とされています。そのため、個人事業主であっても従業員0人の企業の場合は申請できません。いわゆる“ひとり社長”のようなケースも対象外となるため、注意が必要です。

補助を受けるための基本要件

中小企業新事業進出補助金の趣旨は、中小企業等の新事業の拡大を後押しすることです。採択されるためには、企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行い、以下の基本要件を全て満たす3~5年の事業計画に取り組む必要があります。 中小企業新事業進出補助金 基本要件

  • 新事業進出要件
  • 付加価値額要件
  • 賃上げ要件【目標値未達の場合、補助金返還義務あり。賃上げ特例あり】
  • 事業場内最賃水準要件【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】
  • ワークライフバランス要件
  • 金融機関要件

賃上げ特例があることから、事業の成長だけでなく、従業員の賃上げも求められていることがわかります。

昨今は物価の上昇や社会保険料負担の増大により、実質賃金のマイナスが続いている状況です。消費が停滞すると経済が悪化してしまうため、政府としては企業に対して「積極的に賃上げをしてほしい」という思惑があります。

中小企業新事業進出補助金に限った話ではありませんが、今後は補助金が採択されるためには賃上げが避けて通れない、という点を抑えておくとよいでしょう。

以下では、各要件について詳しく見ていきます。

新事業進出要件

「新事業進出の要件」は、新事業進出指針に示す「新事業進出」の定義に該当する事業であることです。主に以下の3つから構成されています。

1.製品等の新規性要件:事業者が新たに製造等する製品等が、当該事業者自身にとって新規性を有している必要があります。過去に製造等した製品の再製造や既存製品の単なる製造量増大、製造方法の変更、性能に有意な差のない製品の製造は該当しません。世の中にとっての新規性は求められません。

2.市場の新規性要件:新たに製造等する製品等が属する市場が、既存事業で対象としていなかったニーズ・属性を持つ顧客層を対象とする、事業者にとって新たな市場(※1)である必要があります。

3.新事業売上高要件:以下2つの要件のいずれかを満たす必要があります。
①「事業計画期間終了後、新たな製品等の売上高または付加価値額が、申請時の総売上高の10%または総付加価値額の15%以上を占めると見込まれるもの」
②「申請時直近の売上高が10億円以上あり、新事業を行う部門の売上が3億円以上ある場合は、計画終了後に当該部門の売上高が10%か付加価値の15%以上を新事業が占める見込みである」

※1 新たな市場:既存事業において対象外だったニーズ・属性(法人/個人、業種、行動特性等)の顧客層を対象とする市場

※参考:「新事業進出指針の手引き」令和7年4月 中小企業庁

付加価値額要件

「付加価値額要件」は、補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、付加価値額(又は従業員一人当たり付加価値額)の年平均成長率を4.0%以上増加させる見込みの事業計画を策定し、その目標値を達成することが求められる要件です。

付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を合計したものです。

賃上げ要件

「賃上げ要件」は、本補助金における重要な要件の一つであり、目標値未達の場合には補助金の返還義務が生じます。具体的には、以下のいずれかの水準以上の賃上げが必要になります。

1.補助事業終了後の3~5年の事業計画期間にて、従業員一人当たり給与支給総額の年平均成長率を業実施都道府県における最低賃金の直近5年間(※1)の年平均成長率(一人当たり給与支給総額基準値)以上増加させること

2.補助事業終了後3~5年の事業計画期間にて、給与支給総額の年平均成長率を2.5%(給与支給総額基準値)以上増加させること

※1:令和元年度が基準の、令和2年度~令和6年度の5年間

また、従業員に対して、目標値の表明がされていなかったり、目標値を達成できなかった場合、補助金全額の返還が求められますので注意しましょう。

ただし、付加価値額が増加していないかつ企業全体として事業計画期間の過半が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、一部返還が免除されることがあります。
賃上げ要件の達成状況は、毎年の事業化状況報告時に提出する決算書や賃金台帳等で確認されます。目標値の表明を従業員等に対して行わなかった場合も、交付決定が取り消され、補助金全額の返還が求められることがありますので、しっかり記録に残しておきましょう。

賃上げ特例要件に該当すると、更に補助金上限がアップします。詳しくは以下で説明します。

事業場内最賃水準要件

「事業場内最賃水準要件」は、本補助金における重要な要件であり、賃上げ要件と同様に目標値未達の場合には補助金の返還義務が生じます。

この要件は、補助事業終了後の3~5年の事業計画期間において、毎年、事業を実施する事業所内の最低賃金を事業実施場所である都道府県の地域別最低賃金よりも30円以上高い水準に維持することを求めるものです。
これは、補助事業を通じて、事業場における賃金水準のボトムアップを図ることを目的としています。
要件の達成状況は、毎年の事業化状況報告の提出時に、賃金台帳などの関係書類によって確認されます。

もし、事業計画期間中、毎年の事業化状況報告の提出時点において、水準に達していなかった場合、原則として補助金の返還が求められます。返還額は、未達だった年の数に応じて計算され、具体的には補助金交付額を事業計画期間の年数で割った額となります。計算式は「補助金交付額/事業計画期間の年数(年)」です。

ただし、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として当該事業年度が営業利益赤字である場合や、天災など事業者の責めに帰すことのできない理由がある場合 には、この補助金の一部返還が免除されることがあります。返還額の上限は、交付された補助金額となります。

ワークライフバランス要件

「ワークライフバランス要件」は、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していることがあげられます。
応募申請前に、仕事と家庭の両立の取組を支援する情報サイト「両立支援のひろば」に策定した一般事業主行動計画を公表することが必要です。
「両立支援のひろば」への掲載は、1~2週間程度かかるため、早めに準備しましょう。

金融機関要件

「金融機関要件」は、補助事業の実施にあり金融機関等から資金提供を受ける場合に、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていることを指します。
必ず、「金融機関による確認書」の提出が必要です。金融機関等からの資金提供を受けずに自己資金のみで補助事業を実施する場合は不要です。

賃上げ特例要件について

「賃上げ特例要件」に該当すると、受け取れる補助金が多くなるメリットがあります。該当する要件は以下のとおりです。 賃上げ特例要件

  • 補助事業実施期間内事業場内最低賃金が年額50円以上上昇している
  • 補助事業実施期間内にで給与支給総額が年平均6%以上上昇している

政府としては、従業員の賃上げを積極的に行い、経済を活性化させたり国力を高めたりしたい意向があります。そのため、積極的な賃上げを行っている中小企業や個人事業主を優遇する枠組みとなっているのです。

基本要件以外のその他要件

基本要件に含まれない、その他の要件については以下になります。

連携体申請要件
複数の事業者が連携して事業に取り組むこと(最大20者まで。)を「連携体申請」と言います。
組合特例要件
「組合特例要件」は、中小企業等経営強化法に基づく特定の協同組合や連合会などが補助金を申請する場合に適用される特例です

補助上限額と補助率

補助上限額は、従業員数に応じて以下のように決まっています(補助下限は750万円)。

従業員数20人以下2,500万円(3,000万円)※
従業員数21~50人4,000万円(5,000万円)※
従業員数51~100人5,500万円(7,000万円)※
従業員数101人以上7,000万円(9,000万円)※

※()内の数字は大幅賃上げ特例適用事業者

なお、補助率は1/2です。設備投資に要した金額の半分が補助対象となります。

補助対象経費

補助対象経費は以下のとおりです。

  • 建物費(機械装置・システム構築費といずれか必須)※建物費の新築(建築物の購入費)は原則対象外
  • 機械装置・システム構築費
  • 技術導⼊費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利⽤費
  • 知的財産権等関連経費
  • (検査・加工・設計等に係る)外注費 ※補助上限額:補助金額全体の 10%
  • 専⾨家経費 ※補助上限額:100万円
  • 広告宣伝・販売促進費 ※補助上限額:事業計画期間1年あたりの売上高見込み額(税抜き)の5%

また、修繕費も原則補助対象外ですが、事業計画の実施に必要不可欠と認められる建物の建築・改修の場合は、補助対象として認められる場合があります。
設備投資をする際やDX化を進める際の経費など、幅広い支出が対象です。

ただし、中小企業の持続的な競争力強化を支援することが目的のため、機械装置・システム構築費または建物費のいずれかを含むことが必須です。
一時的な支出が中心の計画は対象外となるため、将来の事業に必要な資産への投資が求められます。

補助対象外となる経費

具体的には、以下の経費は補助対象外となります。また、計上経費の大半が補助対象外の場合、不採択・採択取消・交付決定取消になるため注意が必要です。

  • 既存事業に活用する等、専ら補助事業のために使用されると認められない経費
  • 事務所等に係る家賃、保証金、敷金、仲介手数料、水道光熱費等
  • 諸経費、会社経費、一般管理費、現場管理費、雑費等、詳細が確認できない経費
  • フランチャイズ加盟料
  • 切手代、電話・インターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付 帯経費は除く)
  • 商品券等の金券
  • 不動産の購入費、構築物の購入費、株式の購入費 など

補助予定件数

補助予定件数に関して、2025(令和8年)度末までに公募回数は4回程度、採択予定件数は6,000件程度が予定されています。ただし、1件当たりの補助申請額によっては、予定件数が増減する場合があります。

スケジュール

▼第1回目スケジュール

公募期間:令和7年4月22日(火)~令和7年7月10日(木)18:00まで(厳守)
応募期間:6月中旬頃に開始(予定)
採択発表日:令和7年10月頃(予定)
交付申請締切日:採択発表日から2ヶ月以内
補助事業実施期間:交付決定日から14ヶ月以内(採択発表日から16ヶ月以内)
実績報告提出締切日:補助事業完了期限日(交付決定通知書に記載)
事業化状況報告期間:補助事業完了日年度の終了後を初回とした以降5年間

あくまでも想定ですが、1回目の公募は4月から始まり、その後2ヶ月スパンで2回目~4回目の公募が続くと考えられます。
なお、全体的な事業スキームは以下のとおりです。

1.事前準備・新規事業の検討
・計画の策定
2. 公募開始~交付候補者決定・申請受付開始
・公募締切
・審査
・交付候補者決定
3.交付決定~補助事業実施・交付申請、決定
・補助事業開始
・確定検査
・補助額の確定
・補助金の請求
・補助金の支払い
4.補助事業終了後・事業化状況報告
・知的財産等報告